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この文章を書いたのは?

お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科理学専攻数学コース 修士二年

小川 実里

第5回理研AIP数学系合同セミナーに参加して

私は、お茶の水女子大学大学院二年の、小川実里です。この度、2024年2月19日から2月21日に開催された、第5回理研AIP数学系合同セミナーに参加しました。まだ肌寒い時期でしたが、会場の近くでは桜が咲いていました。 

理研AIPの正式名称は、理化学研究所革新知能統合研究センターです。人工知能に関する研究が行われており、今回の合宿は、理研AIP数学系チームを主体として、数学、物理学、情報学といった幅広い分野の参加者による議論を目的に開催されました。 

私は、理研AIPのチームの一つである、人工知能・機械学習分野における数学的課題に取り組む数理科学チームで研究パートタイマーをさせていただいており、この合宿には、自分が所属する機関の中で小さくても何かできることを見つけられたらと思い、参加しました。実際に、たくさんの方とお話しさせていただくことができ、研究活動の広がりを感じられました。 

合宿の最初に、理研AIP数理科学チームのチームリーダーである慶應義塾大学の坂内健一先生から、合宿における議論において、客観的に正しさを議論できる科学的な内容を取り扱うといった参加者が共通して守るべき約束事の共有がされました。こうした時間が設けられたことで、伸びやかな議論が活発に行われる合宿になりました。私自身も、安心して自分の考えを深め、参加者と意見を交わすことができ、そうした合宿に参加できたことを感謝しています。

その後、講演とポスターセッションが行われました。 

講演を通して、多彩な分野の研究活動に触れることができました。その中で、数学や自身の研究に関する発見があったことから、研究活動それぞれの密接な関わりを感じました。例えば、数学においてFisher計量を単位行列にすることが情報学での白色化に対応しているような、数学と、数学とは異なる分野との繋がりや、Gibbs測度が定義できない状態からは相転移が起こらないといった、私が当時取り組んでいた研究におけるキーワードが実社会の現象を考える上でどのように扱われているかを知りました。また、講演後の質疑応答では、参加者の多岐に渡る専門分野が相互作用し、多角的な議論に発展することも多くありました。物事の新たな捉え方を意識する、貴重な経験となりました。 

ポスターセッションでは、私もポスターを発表しました。自身の研究について、発表を聞いてくださった方の研究との共通点や、数学とは異なる分野における応用可能性を勉強でき、数学を追究することで様々な世界と繋がれるのだと感じました。具体的には、私が当時研究していたモデルの次元を上げることで物質の相転移を記述できるモデルになるとという、数学の分野で研究が拡張されることで物理学として扱える現象がどのように広がるのかを教えていただきました。また、数学において従来の理論がより広い範囲で成り立つと示せることは、機械学習の分野で技術開発の発展に貢献できる可能性があるかについて議論しました。 

さらに、お食事をいただく際や休憩時間など、参加された方と交流できる時間は他にも多くあり、楽しいお話を伺いました。お部屋に戻ってからも、普段は離れた場所にいる友人や、お世話になっている先輩と過ごし、たくさんの良い思い出ができました。 

 

この合宿のように、私は、数学科に進学を決めた時には想像もしなかったほど、広い世界で素敵な景色を見ることができています。こうした環境にいられることに感謝し、いつかお返しができるようになりたいという気持ちも、私の原動力です。そして、この記事が、読んでくださった方にとって数学の楽しさを感じられるきっかけの一つとなったら嬉しく思います。 

 

※2024年10月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

 

著者略歴

お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科理学専攻数学コース 修士二年
小川 実里
理化学研究所革新知能統合研究センター数理科学チーム 研究パートタイマーⅡ
参加時:お茶の水女子大学大学院 修士一年

趣味:ゴルフ、刺繍、水族館へ行くこと

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