ディオファントス問題
数の世界
普通の数、1,2,3,⋯を自然数と言います。0を自然数に含める流儀もあります。またこれに負の数を加えた0,±1,±2,⋯を整数と言います。整数全体が成す集合をZなどと記します。集合の記号で書くと、 Z={⋯,−2,−1,0,1,2,⋯}={0,±1,±2,⋯} となります。また、分子と分母が整数として表せる数を有理数と言い、有理数全体の集合をQと記します。集合の記号で書くと、 Q={mn∣m,n∈Z} となります。また、実数直線上の点と対応する数を実数と呼びます。実数全体の集合をRと記します。
有理数が与えられれば、これは実数直線上の点を与えます。従って、有理数は全て実数とみなすこができます。この事実は、集合の言葉を使うと Q⊂R と表すことができます。ギリシア時代には、全ての数は有理数であると信じられていました。しかしながら実際には、有理数でない数の存在が知られています。
有理数と無理数
2の平方根√2を考えます。仮にこの数が有理数だったと仮定します。すると、 √2=mn と、2つの整数 m,n の商として書くことかできることになります。√2>0となる様に取れば、m,n>0と取ることができます。いま、m,nをともに素因数分解すると、 m=pi11pi22⋯pikk,n=pj11pj22⋯pjll という形で、それぞれ、いくつかの素数の積として表すことができます。√2 n=mより2n2=m2が成り立ちますが、この式に上の因数分解を代入すると 2p2j11p2j22⋯p2jll=p2i11p2i22⋯p2ikk が導かれます。2は素数であることから、左辺は1+2j1+2j2+⋯+2jl個の素数の積、右辺は2i1+2i2+⋯+2ik個の素数の積となります。整数の素因数分解の一意性から、両辺の因数分解の素数の数は一致しなくてはならないことから、 1+2j1+2j2+⋯+2jl=2i1+2i2+⋯+2ik が導かれます。しかし、左辺は奇数で右辺は偶数であることから、この様な等号が成り立つはずがありません。従って、矛盾が導かれました。この事実と背理法より、最初の仮定、すなわち「√2は有理数である」という仮定は正しくないことが導かれます。
ディオファントス問題
方程式が与えられたとき、その方程式の整数解や有理数解を求める問題をディオファントス問題と言います。整数論の分野では、古くから研究されて来た大事な問題です。 例えば x2+y2=1という方程式が与えられたとき、この場合のディオファントス問題は、この方程式をみたす x,y∈Zやx,y∈Qがどれだけあるか調べるという問題です。x2+y2=1の場合、整数解は(x,y)=(±1,0),(0,±1)により与えられます。有理数解がどれだけあるか、分かりますでしょうか?
有名なフェルマー予想なども、ディオファントス問題の一種です。
フェルマー予想 n≥3を自然数としたとき、Xn+Yn=Znをみたす整数 X,Y,Z で、XYZ≠0となるものは存在しない。
この予想は、1995年にA. Wilesにより解決されました。フェルマー予想にまつわるドラマは、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」などで楽しく読むことができます。
※2016年2月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。