冬休みにオススメの本、絵本 Part1
小中高校生向けの「冬休みにオススメの本・絵本」を、たくさ
「数学を嫌いにならないで」 ダニカ・マッケラー 著 菅野 仁子 訳
二冊分冊で、岩波ジュニア新書の876-877として出版されています。
表題に騙されてはいけません。学校で習う算数や数学が苦手なあなただけでなく、実は、数学が得意と思っているあなたにこそ、「数学を嫌いにならないで」を読んでいただきたいのです。なぜなら、数学の奥深さとその美しさをダニカ先生は、アメリカの女の子の日常目線で、基本的な数学の原理をわかりやすく、そして、楽しく解説してくれているからです。特に、始めの数ページは、目から鱗が落ちること請け合いです。
推薦者:Jinko Kanno(ルイジアナ州立工科大学[Louisiana Tech University] Faculty、研究分野はGraph Theory)
①「幾何への誘い」 小平 邦彦 著
平面幾何について解説しています。「図形の科学としての平面幾何」と「現代数学の立場から見て厳密な平面幾何」 との違いが明確に解説されています。論理の展開が楽しいです。
②「The Hunting of the Snark」 Lewis Carroll 著
「不思議の国のアリス」の作者であるルイス・キャロルは数学者でした。これはFit the First からFit the Seventhまでから成る長い詩です。韻の踏み方と内容が素晴らしいと思います。邦訳もあるようですが、原文をお勧めします。
推薦者:中村 伊南沙(金沢大学理工研究域 准教授、研究分野はトポロジー)
「未来の科学者たちへ」 大隅 良典 著、永田 和宏 著
「役に立たなくてもよい面白いと思うことを研究しなさい」 新聞でこの本を知ってすぐに読みました。本書は科学を覆う「役に立つ, 立たない」の呪縛を解き放ち、自分がほんとうに楽しい面白いと思うことを大切にして進んでいけばよい、それこそがサイエンスの本質である、という強いメッセージを未来を歩む読者に贈っています。 流行よりも面白いと思う方へ、失敗(寄り道)から学ぶことがたくさんあること、など心に染みる言葉が溢れています。
推薦者:金 英子(大阪大学、研究分野は位相幾何学、力学系)
「白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険」 川添 愛 著
ファンタジー小説です。私は魔法が出てくる小説が好きなのですが、よく感じる不満が二つあります。一つ目は描かれている魔法が直感的、日常的すぎるということです。想像もつかないような原理で起こることは、もっと想像もつかない形で起こるべきではないでしょうか。二つ目は、登場人物がどれだけ面白い魔法を使っていても、読者(自分)はそれを再現できないということです。仕方ないことですが少し寂しいです。その点、この小説では、魔法自体が意味不明な状態で始まり、だんだん仕組みや制約がわかってくるという展開で、魔法の魔法っぽさを感じられて楽しかったです。また魔法の原理について主人公と読者に対して等しい情報が提供されているため、読者も一緒に謎解きに挑戦でき、ゲームに近い面白さがありました。ただ、オートマトンについて見たことも聞いたこともない状態で読むとより楽しかったと思うので、サブタイトルを見て難しそうと思った方にむしろおすすめしたいです。
推薦者:加藤 本子(琉球大学 准教授、研究分野は幾何学)
「心は孤独な数学者」 藤原 正彦 著
ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンといふ三人の天才数学者についての、伝記と言へば伝記ですが、単なる伝記に留まらず、彼らの生きた地を著者が実際に訪ねて見聞した様子が生き生きと描かれてゐて、紀行文としても楽しめます。伝記としては、「天才」としての側面よりもむしろ、彼らの「人間臭さ」に焦点が当てられてゐて、例へばハミルトンの悲恋には同情を禁じ得ません。 彼らの様な天才がその時そこに生まれたのは偶然ではなく、生まれ育つたイギリス、アイルランド、インド、それぞれ固有の風土がその創造性の源泉にあつたとする著者の見解には惹かれるものがあります。
推薦者:田口 雄一郎(東京工業大学・理学院 教授、研究分野は数論)
①「親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド」 キャロル・ヴォーダマン 著
②「数の悪魔ー算数・数学が楽しくなる12夜」 ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー 著
③「数学者図鑑」 本丸 諒 著
④「放浪の天才数学者エルデシュ」 ポール・ホフマン 著
本屋で算数や数学の本があるコーナーを見て面白そうなものを選ぶのが一番かと思います。学年を気にする必要はありません。もちろんわからない部分はあると思いますが、それは成長の余白であり、しばらくしてからわかるようになれば成長を実感できたりします。しかし、小学生の方などはどれを選べばよいかわからないかもしれませんので、読みやすそうな本をいくつか紹介させていただきました。数学者の物語も面白いのでおすすめです。
推薦者:松井 一徳(成蹊大学 理工学部 助教、研究分野は応用数学・数値解析)
「第四次元の小説」 R.A.ハインライン 著 三浦 朱門 訳
UCLAの大学院で数学を学んだことのあるSF作家、ハインラインの小説です。解説は、かの有名な森毅先生が書かれています。メビウスの輪やクラインの壺、フェルマーの定理など、一度はどこかで耳にしたことのある数学の話題が登場します。数学的な厳密さには欠けるかもしれませんが、数学の魅力が凝縮された一冊です。読み終わる頃には、あなたもすっかり数学の虜になっているはず!
推薦者:松井 千尋(東京大学 准教授、研究分野は数理物理学)
「無限論の教室」 野矢 茂樹 著
中学3年生の時に読み、とても面白くて感動しました。ユーモアにあふれ、「無限とは」という哲学的なテーマについて、とても楽しく読むことができます。大学のゼミを舞台にしていて、大学ってこんなところなのかな、という憧れも当時感じていました。
推薦者:佐々田 槙子(東京大学数理科学研究科 准教授、研究分野は確率論、数理物理)
「解きたくなる数学」 佐藤 雅彦 著、大島 遼 著、広瀬 隼也 著
タイトルだといつもの数学の問題集?と思ってしまうかもしれませんが、表紙から雰囲気がかなり違っていて、この本には、たくさんの食べ物やお金など身の回りにあるものの写真と、それについてちょっと答えが気になって考えてみたくなるような問題が並んでいます。 問題を解いていくうちに、私たちの生活のこんなところに学校で学んだ数学が!という新しい発見ができるかもしれません。ぜひ一度手に取ってみてください!
推薦者:金沢大学 M2 研究分野は微分方程式
①「数の悪魔ー算数・数学が楽しくなる12夜」 ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー 著
②「放浪の天才数学者エルデシュ」 ポール・ホフマン 著
③「数学セミナー」
これらの本は、私が理学部数学科に進学した後に読んだ本や月刊誌です。私は、高校時代に大学の進路選択に悩み、浪人生活の中で「大学で数学をもっと学びたい!」と一念発起し、数学科に入学しました。大学で数学を楽しく学ぶ中で、時間に余裕ができ、ゆっくり月刊誌の数学セミナーを読める喜びを感じ、数学を楽しむための読書がとても贅沢な時間でした。進路選択に悩んでいたあの混沌とした時期にこの本たちに早く出会えていたら、もしかすると苦しかった時期がもっと短くて済んだのか知れないと思うので、この本を推薦いたします。
推薦者:嶽村 智子(奈良女子大学 理学部 数物科学科 准教授、研究分野は確率論)
Part2に続きます。
※2022年12月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。
イラスト:NorikoT