アクチュアリーとは何でしょう?
アクチュアリーとは何でしょうか。調べてみると、日本アクチュアリー会のウェブサイトでは「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル」と説明されています。多くのアクチュアリーは、保険会社、信託銀行、コンサルティング会社などに所属して主に保険や年金に関わる業務、例えば保険料の算出や将来の収支予測、リスクの分析などを行っています。
アクチュアリーには資格試験があり、確率・統計や保険数理などの基礎科目5科目と、専門職としての見識を論述式で問う専門科目2科目に合格し、所定の研修を修了することで日本アクチュアリー会正会員の資格を得ることができます。資格を持っていないとアクチュアリー業務に携われないわけではなく、大抵は仕事をしながら数年かけて正会員を目指すことになります。保険会社に選任が義務付けられている保険計理人など、正会員でないとなれない役職もあります。
高校の数学で学習する確率は、不確定な事象での中でも法則があらかじめ分かっているものを扱います。例えばサイコロを1個振ったときに出る目は不確定ですが、どの目も同様の確からしさで現れると期待でき、それを前提として色々な計算を行います。一方で、アクチュアリーが扱うような現実の問題では、こうした法則を見出すことも難しい問題です。例えば医療保険の保険料を決めるためには将来の一定期間のうちに入院する確率を知る必要がありますが、それはどう求めればよいでしょうか。通常このような確率は、過去の経験を基に、過去の傾向が今後も続くものと仮定して計算することになりますが、それが本当に正しいかは現時点では決して知ることができません。医療技術の進歩、社会情勢の変化といった簡単には予測できない要素もあり、想定と実際が違った場合にどんな影響があるのかを考えておくことも必要になります。また、様々な考察を経て導いた結果を現実の方策に活かすために、いかに効果的に他者に伝えるかというのもアクチュアリーの重要な役割です。
アクチュアリーは高度な数学を用いると考えられている場合もありますが、アクチュアリーになるために大学院で研究するような数学が必須というわけではありません。一方で、アクチュアリーを取りまく環境は徐々に変化してきており、既存の知識や技術を身に付けるだけでなく、新しい手法も柔軟に取り入れ、継続的に進歩していくことが求められていると言えそうです。これはアクチュアリーの大変な面であると同時に魅力的な点だと思います。私は修士課程まで代数系の専門で、確率や統計については就職した後に基礎から勉強していますが、数学のもつ論理性や普遍性を大学で学んでいたことは、仕事において大いに役立っていると考えています。
近年、大量のデータを手軽に分析できるようになってきたり、将来のリスクのより精密な予測が国際的な傾向として求められてきたりしており、アクチュアリーの活躍の場は今後ますます広がることが予想されます。数学的な思考を社会に直接活かせる一つの形として、アクチュアリーに興味を持ってもらえれば嬉しいです。
※2016年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。