博士と支援、博士と進路
こんにちは、奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科博士後期課程2回生の近藤恵夢です。主な専門は実解析で、Hardy型の不等式について関数空間論も交えながら研究をしたり、Hilbert変換の定義の拡張を考察したりしています。今回は研究以外の部分で、博士における学生生活で悩んだことと、それにどう対処したかを紹介できたらと思います。
・経済的な問題――SGCフェローシップによる支援の活用
私はもともと子供の頃から「算数」や「数学」といった概念が好きでした。純粋に「数式を扱えるってカッコイイ」という憧れがあり、その憧れを追いかけ大学の数学コースへ、修士へ、博士へといつの間にやら上がってきました。
とはいえ、修士から博士へ上がるのには流石に少し葛藤がありました。というのも、博士以降の金銭的援助は難しいと親から言われていたからです。授業料免除や学術振興会の特別研究員(DC1, DC2)も通るかは不確定であり、日々のアルバイトでは授業料どころか生活費も賄えるか怪しいという現状でした。
そんな折に、奈良女子大学で行われていた「SGCフェローシップ」という支援制度を紹介されました(参考:https://sgcfs.nara-wu.ac.jp)。SGCは返還の必要がない給付型かつ、授業料が免除されるコースもありました。この話を聞いた私は、とにかく頼れるところは頼りたいと迷うことなくSGCに応募をし、書類選考や面接を経て、なんと有難いことにSGCに採択されました。
これにより、私は現在も生活費や研究費に関して不安を抱くことなく、研究に集中することができています。生活費とは別にいただける研究費で、高くて手が届かなかった分厚い洋書を買ったり、遠方の学会に対面で出席、発表したりしています。学会に参加するうちに顔見知りの方も増えてきました。博士になってからより学外の研究者の方との交流の機会が増え、学会の度に新たな刺激をもらっています。
・進路の問題――インターンシップ
D2に差し掛かった頃から、将来の進路について真面目に考え始めました。就職かアカデミアに残るかで悩みましたが、より社会に近いところで数学的なスキルを発揮したいと考えるようになり、今は就職の方向に目を向けています。
ただ、数学およびそれを扱うスキルというものはかなり汎用性が高く、まずどの業種から目をつければいいのかもわからない状態でした。そこで、「不安なときはまず行動しろ」という自身の座右の銘に基づき、キャリアサポートの方と相談しながらC-ENGINEを介して博士向けの自分ができそうなインターンシップに応募することにしました。
初めてのインターンシップは主に在宅、最終週のみ出勤という比較的参加しやすい形態でした。約1ヶ月半かけて主にプログラミングを利用した研究に協力をし、最終的には計算結果をうまく発表することができました。
インターンシップが1社だけだとそこだけで企業全体のイメージ自体が固まってしまうかもしれないと思い、他の企業でもインターンシップを受けることにしました。学内で行われた博士向けの企業説明会に出席し、興味があったら応募するなどし、最初の企業も合わせて計3社のインターンシップに参加しました。
複数のインターンシップに参加することで、数学が出来ることによる社会での強みとは何か、が少しずつ見えてきました。具体的には、「数式に抵抗感がないこと」「問題点を細かく切り分ける力」などが強みだとわかりました。研究とインターンシップを同時にこなすのは結構難しかったのですが、より自己分析が進んだのは良いことだと思っています。
・おわりに
博士に進むうえで、研究以外で不安に思うことといえば上に記したような「学費」と「進路」だと思います。ただ、これらを原因にすぐ諦めるのではなく、何か使える制度はないか調べてみたり、誰かに相談してみたりすることで何かしらの活路を見出せることがあります。もし博士に進むべきか悩んでいる人がいたら参考にしていただければなと思っています。
※2024年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。
著者略歴
暇さえあれば絵を描いたり合成音声をいじくったりして遊んでいます。