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この文章を書いたのは?

名古屋大学大学院多元数理科学研究科 准教授

伊藤 由佳理

レディースランチあります!

私は名古屋大学に勤務している数学者です。所属は大学院多元数理科学研究科というところで、ほとんどの方は数学者で、理論物理が専門の方もいらっしゃいます。所属しているのは大学院ですが、理学部の学部学生も教えています。大学に所属する数学者は、研究と教育が主な仕事です。

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撮影者:河野裕昭

まずは私の場合を紹介しましょう。私の専門は代数幾何学です。代数学と幾何学を研究するのではなく、代数的に幾何学を研究するという意味で代数幾何学と呼ばれます。たとえば$xy$平面上、$x+y=0$で定まる直線を考えましょう。これは原点$(0,0)$を通る直線ですが、直線上には原点以外に $(1,-1)$, $(2,-2)$ など無数の点があり、それらはすべて方程式$x+y=0$の解になっています。方程式の解を求める代数学とその方程式で定まる図形の幾何学を、もっと複雑な方程式にしたり、変数を増やしたり、変数を実数ではなく複素数にしたり、いろいろな場合に拡張することで得られる現象について調べるのです。私自身は特異点や特異点解消などの研究に興味を持っています。私の場合、具体例の計算は、ほとんどコンピューターを使わず、中高生と同じように紙と鉛筆でします。一人で考えることも多いのですが、他の数学者と一緒にひとつの問題について議論することもあります。同じ大学にいる人ではなく、海外の大学にいる人と電子メールを用いて議論することもよくあります。また、研究集会といって、研究テーマが近い人たちが集まり、お互いの新しい結果を発表し合ったり、未解決の問題について議論したりすることもあります。普段は遠く離れたところにいても、同じことに興味を持っている人と議論する時間はとても楽しいものです。また研究集会は世界いろいろな国で開催されるので、海外の様々な文化に触れることもできます。

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ケンブリッジ(イギリス)

大学生や大学院生の教育としては、学生向けの講義とセミナーがあります。大学1年生に線形代数学などの基礎的な数学の講義をすることもあれば、大学院生により専門的な代数幾何学の講義をするともあります。数理学科4年生の卒業研究では多くの場合、専門書などのテキストを学生が毎週読んで解説をするセミナーをします。大学院生たちは、セミナーで専門書に加えて、最先端の研究について知るために論文を読むこともあります。また大学院生は修士論文や博士論文の執筆もしますので、その研究成果をまとめるための指導も行います。大学院生になると勉強よりも研究の時間も増えます。指導といっても私が教えるというよりも、最終的には一緒に議論することや、研究についての相談に乗ることの方が多くなります。学位を取得したポスドク研究者がやってきて、一緒に問題を考え、共同研究することもあります。

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ハイデルベルグ(ドイツ)

このような数学の勉強や研究は一人で考える時間も多く、大学に来ても誰とも話さないこともあります。しかし数学の研究も日々進歩していますし、研究集会などの情報はいろいろな人から知ることも多いのです。ところが、数学にはなぜか(私には理由がわかりませんが)女性が少なく、シャイな男性が多いので、女子学生に伝わる情報が少なくなってしまうこともあります。誰ともしゃべることもなく情報も少ないという状況を少しでも改善しようと思って始めたのがレディースランチです。現在、私の所属する研究科では、毎週水曜日の昼休みに、女子学生と女性教員のランチタイムを設けています。数学の質問をすることも可能です。研究で疲れたときにふらっと立ち寄る大学院生もいます。他大学から訪問されている女性数学者と一緒にランチすることもあり、学生たちがいろんなロールモデルに出会う機会にもなっているようです。女性限定ですが、誰でも大歓迎しますので、機会があったら遊びにきてください。

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ウォーリック大学(イギリス)数学科の談話室にて

※2016年10月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

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