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webサイト「数理女子」のデザインへの想い

2026年3月にwebサイト「数理女子」は10周年を迎えます。時代や編集に関わるメンバー自身のさまざまな変化もあり、デザインのリニューアルを検討しています。そこで、あらためて現在のデザインについて、編集メンバー4人のそれぞれの想いをご紹介いたします。

 

 

このwebサイトのデザインの原点は、自分が好きな数学について、自分が素敵だなと思うデザインで、情報を読んだり発信したりしたいなと思ったことです。スイーツや旅行、音楽などについては、自分がいいなと思うデザインで情報を読める媒体がたくさんありましたが、数学にはそれがないな、と感じていました。

「数理女子」のデザインが好きな人にも、そうでない人にも、数学が生み出すワクワクする世界、数学を専門とする女性たちの多様な生き方、各地で開催されている数学の様々なイベント、といった情報が広く届いてほしいと思っています。そのためにも、同じような情報が、様々な雰囲気のデザイン、媒体で発信されることがとても大切だと思っています。

誰もが、数学について、あるいはそれ以外のことについても、できるだけ自分自身の好きなデザインや雰囲気の中で学んだり、情報を知ったりできるといいなと思っています。好みが、たまたま少数派であっても多数派であっても。

好きなデザイン、好きな雰囲気、はその日の気分でも変わるし、いろいろな経験を通して成長とともに変わることもあります。だからこそ、選択肢はたくさんあるといいと思っています。

「一つの選択肢」として、これからもwebサイト「数理女子」では、私たち自身がその時々の感性で素敵だなと思えるデザインで、読みたい&届けたい、と思う記事を発信していきたいと思います。

 

佐々田 槙子                       

最初に「女子中高生向けに数学の情報発信をするサイトを作ろう」という話が持ち上がった際、従来の理工系サイトとは異なる中性的な色合いとデザインを取り入れてサイトを作成してみました。「かわいい」という好意的な意見があった一方で、「女子向けではない」という否定的な声も寄せられました。

その後、2015年に数理女子のサイトを本格的に作成する際、事務局よりデザイナーに「女性雑誌のようなデザイン」というリクエストを出しました。いくつかのデザイン案が示されましたが、私は別の案がよいのではと思っていたものの、当時の他の事務局メンバーは全員一致で現在のデザインを選択しました。実際にサイトを公開し、ポスターを掲示したところ、多くの女性事務員の方々からあふれんばかりの賞賛や「数学が初めて自分のほうを向いてくれたと感じた」という感想をいただきました。これによってとても意義深いサイトを作れたという達成感を得ると同時に、従来の数学の伝え方が一定数の人に「自分たちには関係がない」と感じさせていたことを改めて痛感しました。

しかしながら、数学のイメージを刷新し、多様な人々に数学の面白さを伝える目的で制作したはずの数理女子のサイトが、「女性雑誌」というコンセプトを起点としているがゆえに、「女性に対してステレオタイプを押し付けている」と感じさせる面もあることにも、その後の色々な指摘により気づきました。サイトを制作した当時と比べてジェンダーや他の色々な多様性の認識が深まったいま、さまざまな立場や背景を持つ人が「数学の楽しさを感じられる」「自分にも可能性がある」と思えるよう、サイトのデザインやコンテンツを見直す時期を迎えていると感じています。

今後改善を続け、より多くの人が数学に親しみを持てるような情報発信をできればと考えています。

 

坂内 健一

現在のサイトのデザインに改訂された頃は、私はまだ編集に携わっていませんでしたが、友人の一人としてサイトのデザイン案を見る機会がありました。初めて、サイトのデザイン案を見た時に、本屋さんに並ぶファッション誌のように感じ、「数学を楽しむ」ことが「ファッションを楽しむ」ことと同じように中高生の間で話題にあがる様子が連想でき、公開が待ち遠しく感じられました。私自身、中学高校時代に数学について話題にすることがどこか恥ずかしく、数学が好きなことを公言できずにいました。好きな音楽や映画、ファッションなどの話題と同じように、あの頃もっと数学の話をたくさんの人とできていたら楽しみが増えていたように思います。

 

嶽村 智子

数理女子のポスターをはじめて見たときの印象は、「女子力が高いデザイン」でした。ここでの女子力とは、世間から期待される形での女性的な華やかさという意味だとします。学生時代を通して、私の中では、女子力の高い人の領分に踏み入るのは遠慮すべきだという意識が培われていました。さらに「数理」女子ですから、「女子力だけでなく、数学力もこのくらい(自分とかけ離れた水準)ないとだめだ」みたいなことが書いてあるかもと思い、ホームページは見ないことにしました。その後ワークショップなどを通して数理女子に携わる機会があり、何かの条件で選ばれた人たちの集まりではないことがわかりました。デザインも、多様性への想いを反映したものだということがわかってきたのですが、女子力に対する長年のわだかまりのせいか、いまだに少し違和感を覚えることがあります。

 

加藤 本子

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