冬休みにオススメの本、絵本 Part2
小中高校生向けの「冬休みにオススメの本・絵本」を、たくさ
「天才スマリヤンのパラドックス人生」 レイモンド・スマリヤン 著 高橋 昌一郎 訳
ジョークとパラドックスに満ちた本です。 論理パズルが随所に出てきますが、かの有名なゲーデルの不完全定理(証明不可能な正しい命題があるなどの定理)に関連したものが出色です。この証明を、正直者と嘘つきのいる島の問題という論理パズルに作りかえ、さらに派生させて面白いパズルを次々と創作していきます。横道に逸れて、ゲーデル数に関連した面白いジョークも。 他にも、非常に有利に見える取引が次の一言で10億円支払わなければならなくなる論理トリックの話や、音楽の才能も豊かなスマリアンらしく、ラフマニノフやルビンシュタインなど有名音楽家の登場するジョークも盛りだくさんで、小道に誘われ心の赴くままに散歩しているような気分になれる本です。
推薦者:嘘つきスマリヤン信者(大阪公立大学 理学部数学科3年)
「算数・数学で何ができるの?:算数と数学の基本がわかる図鑑」 松野 陽一郎 監訳 上原昌子 訳
古代から現代に至る数学の流れを、さまざまなトピックを取り上げながら紹介しています。内容もですが使われている図版などが正確で大人が見ても楽しめます。また意識的に女性数学者を多く取り上げているように見えます。
推薦者:小林 毅(奈良女子大学理学部数物科学科 教授、研究分野は数学)
①「すうがくでせかいをみるの(海外秀作絵本)」 ミゲルタ・タンコ 著 福本 友美子 訳
②「トポロジーの絵本(シュプリンガー数学リーディングス)」 G.K.フランシス 著 宮崎 興二 訳
③「M.C.エッシャー (ちいさな美術館)」 M.C.エッシャー 著
④「数学にときめくーあの日の授業に戻れたら 」 新井 紀子 著
欲張って4冊も挙げてしまいました。絵本から「だまし絵」で有名なエッシャーや、迫力のある肉筆に溢れたトポロジーの本までが最初の3冊です。4冊目は、初版が2002年、ネット上の算数教室が既にひらかれていたことに改めて感銘を受けます。「自分が中学高校の頃にこの本があったらなあ」という20年前の記憶と共に、副題の「あの日の授業に戻れたら」にじんと来てしまいます。
推薦者:森藤 紳哉(奈良女子大学数学教室 教授、研究分野は解析学)
「かずあそび ウラパン・オコサ」 谷川 晃一 著
1はウラパン、2はオコサ….1と2だけでたのしく遊べる、ちょっとふしぎな「かず遊び絵本」。遊びながら2進数に親しめますし、数の表現はこんなにも自由なんだと感じられると思います。
推薦者:根上 春(千葉大学大学院 博士前期課程2年、研究分野は組み紐群の表現)
「数字であそぼ」 絹田 村子 著
大学で数学を勉強するってどんな感じなのかな、数学者ってどんな人なんだろう、という疑問に応えてくれる漫画。フィクションで誇張されているところもあるけれど、どれもあるあるというエピソードばかりが満載です。
推薦者:落合 啓之(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 教授、研究分野は代数解析学)
「論理的思考を鍛えるためのパラドックス」 ニュートン編集部 編著
高校生のときパラドックスや数学パズルの本にドはまりしました。ドラえもんのセワシくんのタイムパラドックスの説明など、未だに納得いかずに心の中でセワシ君にツッコミを入れています。さて、この本は色々な種類のパラドックスがなんと58個もカラーの図版つきで紹介されています。あぁ、高校生のあの頃に読みたかった!もちろん、今読んでも面白いです(もうちょっと絵がかわいいと言うことなし)。皆さんも是非是非読んでみて下さい。
推薦者:本田 あおい(九州工業大学 准教授、研究分野は解析学・応用数学)
「りんごかもしれない」 ヨシタケシンスケ 著
ある日、男の子が帰ってくると、テーブルの上にりんごが置いてありました。しかし、そのりんごを見て男の子は考えます。「もしかしたらこれは、りんごじゃないのかもしれない」 数学とは世界の見方を与えてくれるものだと私は思っています。数学を知らなくても困らないかもしれませんが、数学を知ることで見えてくる景色がある。新しい景色を見たくて数学に取り組んでいるのかもしれません。あらゆる事象に数学を見出すことができ、それは事象の本質を問いかける作業です。この子がりんごを前に繰り広げるのは「りんごとは何か」という思考、性質による特徴づけを与えたり、ある概念の特殊な例として捉えようとしたり(らんご、りんご、るんご、・・)。私にはこの子が数学と出会った日を描いているように見えるのです。でも、そんな難しいことを考えなくても大丈夫。自由な発想をお楽しみください。
推薦者:村井 紘子(奈良女子大学 研究院自然科学系 准教授、研究分野はトポロジー、折り紙)
①「目で見る数学ー美しい数・形の世界」 ジョニー・ボール 著 山崎 直美 訳←小・中・高校生向け
2006年に出版された絵本で、私は大人になってから出会いました。「数を数えるとは、どういうことか?」から始まり、社会の様々な現象に隠れている数学のネタや不思議が広く紹介されています。カラフルな絵や写真がふんだんに盛り込まれているので、見ているだけでワクワクしますし、内容的には、高校までの数学ではなく、大学以降の数学への知的好奇心を刺激する1冊だと思います。見た目は絵本でも、年齢に関係なく、その段階に合わせて楽しめるので、まずは手に取って開いてみてください。続編もあります。
②「無限論の教室」 野矢 茂樹 著←高校生向け
高校生の時に、当時の数学の先生に紹介していただいて、繰り返し読んだ本です。哲学の教授と学生2人のやり取りの中で、大学の集合・位相で習う数学のトピックのいくつかを、物語の中でわかりやすく説明しています。数学好き、理系の人だけでなく、文系の人にもおススメです。数学の立場からだけではない「無限」の見方が広がりますし、高校までのカリキュラムに沿った学習とは違う学びの世界を垣間見れると思います。
推薦者:酒井 祐貴子(北里大学一般教育部 准教授、研究分野は整数論)
①「タイショウ星人のふしぎな絵」 中島 さち子 著
数理女子ワークショップ初回でも取り扱った、対称性を利用したさまざまな作品の作り方を線対称なセンちゃんとともにストーリーに合わせてお伝えしていきます。何が生まれるかはあなたの想像力次第!Playful Tinkering(楽しく試行錯誤していじくりまわす)要素満載の大人もこどもも一緒に楽しむ本!ぜひ読んでください♪
②「はじめてであう数学の絵本」 安野 光雅 著
いわずとしれた最高の名作!数学の自由な観点を、体験的なさまざまな問いを通して楽しく本質的に伝えてくれます。絵も可愛いし、最後の大人向けの解説も奥が深い!こどもも大人も一緒になっていろんな発想で楽しめ、気づいたら自由な柔軟な心と頭になっているかも!世界的にもオススメしたい、素晴らしい絵本です。
推薦者:中島 さち子(steAm, Inc. CEO、研究分野はSTEAM education、Math Art)
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※2022年12月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。
イラスト:NorikoT