数学の知識を社会で活かす
現在、構造計画研究所という会社で活躍されている岡村祐(おかむら・ゆう)さんに、数学の魅力について伺いました。
――本日は、よろしくお願いいたします。岡村さんは、今まで数学とはどう関わって来られたのでしょうか?
大学では数学を専攻していました。大学院では、簡単に言うと中学生の頃に学んだ連立一次方程式の大規模な問題を、高速かつ正確に計算するアルゴリズム※1の研究に取り組んでいました。
――なぜ今のお仕事を選ばれたのでしょうか?
就職活動に臨むにあたって、研究所やIT系企業で行なわれている仕事について調べてみると、シミュレーション※2を用いて答えを見出すなど、本質的な仕事内容は数学の研究で取り組んでいたことと大きく変わらないことに気がつきました。それなら、数学の知識を活かして、コンピューターで何かしたいと考えるようになりました。学生時代、「数学科は就職できない」という話を耳にしていたのですが、実際にはそんなことはありませんでした。
――今の会社では、具体的にどのようなお仕事をされていますか?
将来のリスクに関する重要な要因を識別し、目標が達成できるかどうかの可能性を計算するためのソフトウェア『Crystal Ball』のマーケティング※3や、お客様の課題の本質を探り出し、効率よく課題を解決するための方法を考えるコンサルティング業務を担当しています。シミュレーションの道筋を検討する際に、確率や方程式などの数学の基本的な考え方が必要になります。お客様からシミュレーションの仕組みについて質問されることもあるので、関連する論文を調べたり、計算結果から計算式を逆算したりすることもあります。
――最後に、数学に興味を持っている中高生に向けて、メッセージをいただけますか?
たとえばスマートフォンを見るだけでも、撮った写真を加工できたり、メッセージを安全にやりとりできたりすることの裏では数学が働いています。数学が目に見えるかたちで使われていることはまれですが、必ず社会のどこかで役に立っていて、幅広い分野で応用されています。
より広い範囲・様々な角度から物事を観察・理解できる学問を学びたい方には、数学科・数理科学科はおすすめです。ぜひ視野を狭めることなく、色んな領域にチャレンジしてみてください。
※1 アルゴリズム:問題を解決するための方法や手順。
※2 シミュレーション:ここでは、コンピューターを用いて模擬的に実験を行う意味
※3 マーケティング:お客様に魅力に感じてもらえるような、商品の売り方の仕組みを考えること
※2016年7月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。