key

この文章を書いたのは?

シミック株式会社 データサイエンス事業本部 統計解析第1部

A.M

薬の開発×数学 -好きを追い求めて-

はじめに
 こんにちは。私は大学と大学院を数理科学科で過ごし、統計学を専攻していました。現在、私はCRO(医薬品開発業務受託機関)という「製薬企業や医療機器メーカー等のパートナーとして、医薬品や医療機器の開発のお手伝いをする業界」で、統計解析の仕事をしています。今回は、私が数学を勉強、研究するようになった経緯や、CROの仕事、「薬の開発×数学」の面白さをご紹介したいと思います。

進学の理由
 私が数理科学科に進学した理由は「ただ数学が好きだったから」です。薬の仕組みにも興味があり、薬学部への進学を考えていた時期もありましたが、化学よりも数学の方が得意で、また数学に向き合っているとワクワクして楽しかったので、数理科学科への進学を決めました。

分からないことだらけの数学,今の仕事との出会い
 数理科学科では毎日が「分からない」との遭遇で、最初は戸惑いました。しかし、クラスメイトと一緒に勉強する中で「分からない = 面白い」だと気がつき、そこから一気に楽しくなりました。昔から私は一つのことに集中するよりも、幅広く手を出す方が好きだったので、数学と他分野を繋ぐ研究や仕事ができないか考えるようになりました。そこで薬への興味が再燃し、薬の開発に数学が活かせないか調べている中で今の仕事と出会い、就職先を決めました。

CROの仕事・やりがい
 医薬品・医療機器(以降まとめて「薬」と表現します)の開発には、大きく分けると「創薬」と「育薬」の2つのプロセスがあります。
 創薬は、基礎研究から治験(健康なボランティアの方や患者様に薬を投与し、有効性や安全性を調べる試験)を経て、薬ができるまでをいいます。一方、育薬は、薬が実際の医療現場で使われてから、現場で得られた情報をもとに、薬のより適正な使用や改良、さらなる新薬の開発へと活かされることをいいます。
 統計解析の仕事は、創薬・育薬どちらのプロセスでも非常に重要な役割を担っています。創薬では、最適な試験計画を考える治験デザインや、解析計画の立案、データ解析の場面で、統計学の知識が必要になります。また、育薬では、薬を実際の治療に使用して発生した副作用等を集計したり、医療現場の膨大なデータから、薬がよく効く人とそうでない人の違いを分析したりする場面で、やはり統計学が活きてきます。

 CROで薬の開発をするやりがいは、「世界中の人の健康に貢献できること」だと思います。
 新薬の開発には、一般に10年以上の年月がかかります。しかし、統計学を駆使して適切な治験デザインを組めば、できるだけ短い期間で有効性・安全性を示し、患者様に早く薬を届けることができます。特に、CROは様々な企業・アカデミアと仕事をするため、幅広い疾患領域での開発に携わります。治験デザインや解析手法は、疾病や剤形によって全く異なるため、
勉強することは多いですがとても面白いです。
 また、CROは全体的に女性が多く(弊社は約55%が女性社員)ダイバーシティへの取り組みもかなり進んでいる印象があり、働きやすさも実感しています。

「好き」が繋がって開く道
 数理科学科進学を決めた時は統計学もCROも全く知りませんでしたが、結果的に自分の色々な「好き」が繋がって今の自分になっています。Appleの創業者Steve Jobsもこれを”Connecting the dots”と表していますが、その時々でやりたいことをやっていった結果、後々それらが繋がって新しい道が開くのだと思います。
 将来のことは今考えても分かりません。また、数学を勉強すると決めたからといって、一生数学しかやってはいけないわけではなく、いつでも方向転換していいのです。ですから、もし今数学が好きという気持ちがあるなら、その道に進んでみてはいかがでしょうか。きっと素晴らしい経験になるはずです。

 

※2021年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

シミック株式会社 データサイエンス事業本部 統計解析第1部
A.M
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 基礎理工学専攻(数理科学)修了
趣味は語学と食べ歩きです。数学と美味しいご飯は世界をつなぐ言語だと思います!

SNS Share Button