工学から数学へ
私は今、純粋数学を専門としている修士2年ですが、大学学部時代は数学科ではありませんでした。学部では電子工学を専攻し、電気回路やプログラミング、信号処理などを勉強していました。そんな私が大学院で専門を変え、工学から数学の世界へ飛び込んだのには、もちろん理由があります。
大学4年時に配属されたのは、信号処理の研究室でした。そこで私は、数学の定理や結果が、工学の理論に多いに用いられていることを知りました。線形代数はもちろん、関数解析といった純粋数学の主要な結果が、工学の理論を裏付け、意味のあるものにしています。たとえば、数学の理論によって、誤差の収束を保証されていると、そのアルゴリズムが信用に足るものであるとわかります。このように、一見全くつながりがないように思える純粋数学は、実は工学にとって必要不可欠な存在なのです。そう感じた私は、大学院では純粋数学を勉強・研究することに決めました。
そうして飛び込んだ数理科学科では、今は関数解析なども勉強しながら作用素環の研究をしています。学部時代に数学を学んでいなかったので、最初は右も左もわかりませんでしたが、とても尊敬している指導教員の勝良健史先生や先輩、同期、後輩のおかげで充実した研究生活を送っています。とっても正直な話、数理科学科には排他的な雰囲気があると勝手に思っていたのですが、入ってみるとそんなことは無く、他学科から来たヘンなヤツ(私)にも気軽に接してくれます。女子学生は多くはありませんが、その分学年を超えて仲良くしています。
将来のことはまだよくわかりませんが、数学を学んだ人間として工学に貢献していきたいと思っています。大学での研究内容などから、特に信号処理や機械学習に興味を持っていますが、もっと広く人工知能の理論から応用まで関心があります。自分の得意なことは分野を飛び越えることだと思っているので、これからも自分の専門や経験にとらわれず新しい領域にチャレンジしていきたいです。それから、工学と理学の溝が無くなって、学際的な分野がもっと発展していったらとても嬉しいなと思います。その橋渡しになれるように、これからも頑張ります!
※2017年5月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。