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この文章を書いたのは?

櫻井 みぎ和

芝浦工業大学 工学部共通学群数学科目 助教

夢を叶えるカギは「あきらめない」気持ち!

皆さんは数学者というとどのような人を思い浮かべますか?数学者は「気難しそう」とか「ちょっととっつきにくい」と考えている人が多いのではないでしょうか。かく言う私は割と普通に人生を歩んできました。そんな私の人生を切り取って、高校時代から現在までを振り返ってみることにします。

【高校時代】

中学の頃まで私は特に数学に関心があったわけではなく、数学は受験に必要な科目だから勉強するという認識しか持っていませんでした。そんな私が急に数学に興味を持ち始めたのはある先生と出会ったことがきっかけでした。その先生は数学の先生で、いつも質問に行くと放課後の遅い時間まで勉強を教えてくれました。先生の教え方がとても上手で、私も数学の勉強が楽しくなっていきました。私はその先生の影響で「将来はこんな先生になれたらいいな」と本気で思うようになりました。「数学科のある大学に進学したい」そんな思いを親に打ち明けたところ、「女の子なのだから文系に進めばいいのに、なんでわざわざ数学科を受験するの?」と言われてしまいました。そのとき、私の夢を応援してくれない親に腹を立てた記憶がありますが、今思えば娘の人生を心底心配しての言葉だったのだと思います。改めて、大学で数学を学びたいという気持ちを親に話すことで、最終的には理解してもらうことができました。私の話をきちんと聞いてくれた親には心から感謝しています。

【大学時代】

大学は親の勧めもあり、女子大に進学しました。今思うと女子大で数学を学べたことは大きな財産となっています。現所属大学でも、大学のOGの先輩方が教員として多く働いています。生き生きと働いている姿を見て日々励まされています。今の研究分野である「結び目理論」との出会いは、学部3年生の頃に受講した授業がきっかけでした。結び目の変形を自分の頭で動かして考えたり、その性質を考えたりする授業がとても楽しかったのを覚えています。その他にも幾何学系の授業を中心に受講し、結び目理論の専門のゼミに所属することにしました。大学院に進学後は研究がなかなか進まずに何度も悩みました。それでも、指導教員の先生の厳しくも温かい指導を受け、また周囲の仲間に励まされ何とかやってくることができました。高校の頃は、正直高校の数学の先生になれたらいいなという感覚しかありませんでしたが、大学で学びたい分野に出会って「まだ研究を続けたい」、「数学者になりたい」、「高校よりも高いレベルの数学の教育に携わりたい」と考えるようになっていきました。

【社会人】

幸運にもご縁があって、博士号取得後すぐに、工業高等専門学校(以下、高専と略記)にて教員生活をスタートすることができました。高専の学生は気性が穏やかで真面目で優秀な学生が多かったという印象を持っています。そんな高専の学生を指導するのは楽しく、夢だった数学を教えられる仕事に就けて嬉しかったです。戸惑うこともたくさんありましたが、学生と一緒に学び合うことができて、人間としても大きく成長できたと思っています。ただ一つ、大きな悩みだったのが、そのとき家族と離ればなれだったことで、精神的にも肉体的にもつらい日々だったことです。それでも数学はやめたくない。そんな想いで職場の異動を決断し、現在に至りました。今は家庭と仕事の両立を目指して日々奮闘しているところです。大学教員の仕事は大変ではありますが、やっぱり大好きな数学を研究し、教えることのできる今の環境はとても幸せだと感じています。

今までの人生を振り返ってみて、決して簡単な道のりではなく、何度もあきらめようと思ったこともありました。しかし、どこかであきらめていたら今の自分はないと思います。これからもいろいろな苦難に出会うことがあると思いますが、数学を好きな気持ちを忘れずに日々頑張っていきたいと思います。

 

※2018年9月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

櫻井 みぎ和
芝浦工業大学 工学部共通学群数学科目 助教
趣味はアロマテラピーとハーブティーです。ハードな毎日を過ごしているため、息抜きは欠かせません。ちょっと疲れたなーと感じたときに、研究室に常備してあるハーブティーを飲んだり、ルームフレグランスをシュッと一吹きしてリフレッシュしています。

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