大学院生のリアルライフ
はじめまして、慶應義塾大学の大学院、修士課程2年の嬉野由です。今回は私の学生生活について記事を書かせていただくことになりました。この記事を通して少しでも多くの人が数学科・数理科学科のことを知ってもらえればうれしいです!
数学の研究のこと、大学院での生活のこと、学部生のころ所属していた部活動のことについて書きたいと思います。
・数学の研究について
私は現在、確率論が専門の種村研究室に所属しています。修士論文ではエレファントランダムウォークという確率モデルについて研究を行いました。
学部4年から確率論の研究室に所属してから、長期休み以外ほとんど毎週セミナーで発表を行いました。修士1年の前期はマルコフ過程についての本を読み、修士2年の後期からは自分の修士論文のテーマを探すためにいくつかの論文を読み、発表を行いました。
修士2年になった2020年度はCOVID-19の影響でほとんどの授業がオンラインになり、セミナーもオンラインになりました。前期の数か月は図書館に入れず、研究に必要な数学書がオンラインでは閲覧できないものだったためとても不便でした。しばらくしてから図書館から郵送していただけることになったので研究に大きな支障が出ず、無事修士論文を書くことが出来ました。対応してくださった大学職員の皆さんに感謝です。
セミナーでは論文を発表したあとに、指導教員の種村先生や同じ研究室の学生とこんなことが出来るのではないか、この論文の仮定を変えたらどんな結果が出るかなどをディスカッションし、そのアイデアの中から試行錯誤した結果、うまく証明できたものが修士論文にまとまっています。学部生の時は教科書を読むことで手いっぱいだったので、まだ誰も知らない結果を自分で計算し証明する“研究活動”はとても面白かったです!
・大学院での生活のこと
簡単に大学院での私の生活をお話ししたいと思います。大学院とは、研究活動を行い、修士号や博士号を取得するための高等教育機関です。
私の大学の数理科学科では学部の同級生のうち半分くらいの人が修士課程の大学院へ進学しました。修士課程では、専門課程の授業の最低単位数があるのである程度授業をとる必要がありますが、基本的には自分の研究を行います。またアルバイトのティーチングアシスタントとして学部生の授業を手伝ったりもします。
私の所属していた研究室では週1回のセミナーに参加することが義務でしたが、それ以外はとくに制限がなかったので、興味のある授業を聴講したり、アルバイトや就職活動をしながら、自分のセミナーの発表準備と修士論文のための研究を行う日々でした。私はぎりぎりまで溜め込んでしまう性格なので、セミナー前日 に自分の証明が間違っていたことに気づき、睡眠時間を削って発表準備をすることも多かったです…
先生や先輩が優しい方ばかりだったので嫌にならず研究を続けることが出来たのだと思います。
・部活動のこと
学部生のころは体育会の部活動に所属していたので、週のうち4日は朝練習に参加し、授業を受け、夕方からまた練習を行う毎日でした。また試合が平日になることも多く、友人にノートを見せてもらい、提出物も〆切前に早めに出すことで何とか単位を落とさず進級できました。当時助けてくれた友人達には頭が上がりません。
意外に思われるかもしれませんが、個人的には、部活動やサークルを楽しみたい人にこそ、場所や設備に縛られない数学という学問を選択してほしいと思います。実験や必修が多く、余暇がないと思われがちな理工系ですが、選択する学問によっては自分の時間がコントロールできると思っています。
以上が私の学生生活のお話です。多くの人に助けられて数学を続けることが出来たと思っています。この場を借りて御礼申し上げます。
数学系の分野は女性が少ないですが、研究については男女関係なく、真剣に議論をしてきましたし、女性だからと馬鹿にされることもありませんでした。また、数が少ないためか女性同士はとても仲が良く、卒業してからも連絡をとりあっています。私はこの4月から就職する予定ですが、より多くの女性が数学に興味を持ってくれるといいなと心から願っています。
※2021年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。
※嬉野さんが紹介された慶應義塾大学理工学部数理科学科の在学生インタビューはこちら
著者略歴
趣味はゴルフで全国大会出場の経験もある。
2021年4月よりIT業関連の企業に就職予定。