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この文章を書いたのは?

九州工業大学 情報工学研究院 知能情報工学研究系 准教授

本田 あおい

コロナ下での数学遠隔講義

皆さん、こんにちは。私は九州工業大学で数学教員をしています。工学・情報工学は数学が実社会で役立っていることを具体的に実感できる分野です。もっともっと数学を活用してこの分野が発展してほしいと願いながら日々教育と研究に取り組んでいます。さて、2020年度はコロナウィルス感染症のため教育現場は大きな影響を受けることになりました。本稿では現在私が大学で行っている遠隔講義についてご紹介します。新型コロナの感染拡大で、私の大学では2020年度前期の授業は完全遠隔での実施となりました。後期には部分的に講義室での対面授業も行われるようになりましたが、11月には国内の感染拡大傾向が現れるなど、この先どうなるのか予想もつきません。これまでは、板書中心の講義スタイルだったものを一気に転換することになりました。1コマの内容を大きく3つに分け、予めYouTubeにアップした講義動画を視聴する時間、オンラインで講義の補足や議論ができる時間、講義で出た演習課題を自分で考える時間、の組み合わせで実施することにしました。ネット回線や学生への配慮すべき点などの色々な制約条件の中で少しでも教育効果を上げられるように工夫してみたものです。

動画は実写のものとスライドを利用したものを作成しています。実写動画について尋ねられることが多いので、簡単に説明します。実写を入れたのは、板書のスピードで思考することを身に着けてほしいため、加えて顔が見えている方が理解しやすいのではないかと考えたためです。折角なので何か面白いことをやってみようと透明ボードを黒板代わりに使うことにしました。市販品は高価なので自作することにしました。工作経験はほぼないのに行動が大胆になっているのは、コロナ自粛で退屈していたせいです。設計図を作り、アクリルボード、木材、L字金具、ボルト、キャスター(コロ)を購入、電動ドリルで穴を空けて工作開始。途中、長方形の枠部分がねじれてしまってやり直したり、ネジが足りなくなったり・・・家族の助けもあってなんとか完成しました。

翌日から撮影に取り掛かりましたが、このとき家に適切な撮影場所がないことに気づきました。居間は「ボードを通して映り込む壁紙や家具が気になって内容に集中できない」、バックが白い壁紙だと「ボードの白い文字が見えない」、濃い色の戸の前は「暗い」、明るくしようと電灯や電気スタンドをつけると「写り込んだ光がボードに反射」、なかなか背景、光源、広さを兼ね揃えた場所が見つかりません。試行錯誤の末、居間の掃き出し窓をバックに黒ビニールの養生シートを吊り下げ、若干暗い背景でなおかつ自然な太陽光の入るスペースを確保することができました。内容を決めてから1本ずつ撮影します。どうしてもセリフを噛んでしまうので、1本あたりの長さを短めにして撮影前に一通り反芻してから撮影するようにしました。慣れると段々スムーズに撮れるようになりました。撮影後は動画編集ソフトを使ってNG箇所のカットや、ボードの木枠が見えないようトリミングをしています。画面の余りには、スライドの画像を入れています。他にもうひと手間加えています。どんなひと手間かわかりますか?もしよかったら動画も御覧ください。

 

 
実写の動画教材

https://youtu.be/Vl_XeQmL4gI

スライドを使った動画教材

https://youtu.be/FxOxNKArhbw

 

 

動画の1本がなるべく10分を超えないようにし、1コマあたり数本、実写版のものとスライドを使ったものを内容により使い分けています。受講生にはYouTubeにアップしたものを事前に視聴してもらい、オンライン双方向講義で補足説明をし、残りは演習問題の時間です。オンライン講義ではランダム指名で動画を観たかどうか確認するような質問をしています。どれもこれも初めて使うツールばかりで、試行錯誤しながら段々とそれぞれのツールの良さもわかりました。学生の反応を全身で感じられる対面講義が未だ開始できないのは残念ですが、予想もしなかった外力のために急速に動く教育現場にワクワクもしています。今回のコロナがなければ、今頃は相変わらずチョークで板書の講義をしていたはずです。普段からもっと教育改善に力を入れ新しいことにチャレンジすべきだったと反省しています。教育も、そして教員である我々も、学生たちと一緒に常に成長していきたいと強く感じました。

11月6日に国立情報学研究所主催のシンポジウムでオンライン講義の数学授業事例紹介を行いましたので、もしよかったらこちらも御覧ください。

国立情報学研究所のYouTube チャンネル

https://www.youtube.com/user/jyouhougaku/videos

 

※2021年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

九州工業大学 情報工学研究院 知能情報工学研究系 准教授
本田 あおい
専門は数理解析学と情報数学。現在は、非線形測度と積分理論の構築と説明可能な深層学習ネットワークの研究、それから、コロナ太り脱出のためノンオイルフライヤーを使ったダイエットレシピの開発に日夜取り組んでいます。

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